嘔吐と下痢

    冬期乳児下痢症     
  キャンピロバクター腸炎 
  サルモネラ腸炎     
  O157        
  細菌性食中毒      
  下痢の食事       
  周期性嘔吐症(自家中毒) 

  

冬季乳児下痢症

【問】1歳の子が白色の下痢をして、冬季乳児下痢症といわれました。どんな病気ですか。

【答え】毎年冬になると乳幼児の間で嘔吐下痢症が流行し、それを冬季乳児下痢症と言います。 冬季乳児下痢症はウイルスの感染症で、ウイルスの種類は80〜90%をロタウイルスが、 5〜8%をアデノウイルスが占めます。

 潜伏期間は1〜3日で、突然の嘔吐で発症し、後で下痢となります。下痢は白色のこと が多いので、昔はこの病気を白痢と呼んでいました。症状の程度はさまざまで、嘔吐が十 数回の子も、全然ない子もいます。症状で問題になるのは脱水で、嘔吐や下痢が頻回で、 元気がなくなって、おしっこが少なくなってきたら要注意です。

 治療としては、このウイルスに直接効く特効薬はないので、対症療法と食事療法をします。脱水が激し いときは点滴や入院が必要になります。ミルクを飲む乳児は乳糖のないミルクが有効です。





キャンピロバクター腸炎

【問】下痢で検査したらキャンピロバクター腸炎といわれました。どんな病気ですか。

【答え】キャンピロバクター腸炎はキャンピロバクター菌によっておこる腸炎で、小児の 細菌性腸炎の中では最も頻度の高いものです。この菌は鶏肉や豚肉などにいて加熱すれば 死滅するのですが、これらの料理の際に使用したまな板、包丁、手などを介して感染する といわれています。しかし、菌が口から入って症状が出るまでが2日から11日間と長いた め、ほとんどの場合は原因の食物を特定することは困難です。

 症状は嘔吐、下痢、発熱、腹痛で2日から5日間続きます。便に粘液や血液が混じること がありますが、程度は一般にサルモネラ腸炎よりは軽度です。診断は便の培養で菌の有無 を調べておこないます。治療はキャンピロバクター菌に有効な抗生剤が基本で、症状の程 度にあわせて、点滴や止痢剤を用います。





サルモネラ腸炎

【問】サルモネラ腸炎とはどんな病気ですか。

【答え】サルモネラ腸炎はサルモネラ菌によっておこる急性の腸炎で、小児の細菌性腸炎 としてはキャンピロバクター腸炎についで多い腸炎です。

 症状としては嘔吐、下痢、腹痛、 発熱がさまざまな程度で出現します。下痢は血液が混じることがあります。感染経路は食 物からが主ですが、人から人へうつることもあります。潜伏期間は通常0日から3日で、 症状がでたら、診断のために便培養でサルモネラ菌の有無を調べます。症状の程度にあわせ た適切な治療をおこなうと、ほとんどの人が1週間以内に治ります。疑わしい症状がでたら、 病院で検査と治療を受けましょう。

 合併症としては敗血症、骨髄炎、虫垂炎、胆道炎、尿 路感染症、髄膜炎、膵炎などがあります。もし家族がサルモネラ胃腸炎になったら汚物の 処理に気付けたり、手洗いをよくしましょう。

【追加】この地区のサルモネラの集団発生例としては、数年前に学校給食を介した件と 、H11年4月に発生したスルメによるものがあります。スルメによるものは当院でも 1例ありました。





O157

【問】話題になっている大腸菌のO157とはいったいどんな細菌ですか。

【答え】大腸菌は人や家畜などの哺乳類の腸管内に生息する常在菌です。大腸菌の型は、 菌の細胞表面にあるO抗原の種類によって分けられています。0157とは157番目のO抗原 をもった型の大腸菌という意味です。

 大腸菌は通常は病原性はありませんが、0157のように型によっては病気を発症する ので、これを病原性大腸菌といいます。病原性大腸菌は0157以外にも約50の型が知 られています。病原性大腸菌の内、重症な病気を引き起こすベロ毒素を産生する型が数種 あり、その中で0157の発病の頻度が一番高いのです。

 また、O157のDNAの型別というのはO157の中の家系のようなもので、感染源 を特定するのに役立ちます。

 0157でなくとも、下痢に血便、嘔吐、発熱、不 機嫌などを伴う場合には、食中毒の可能性がありますので、医療機関を受診しましょう。





細菌性食中毒

【問】小児の細菌の食中毒としてはどんなものが多いですか。

【答え】小児の細菌性食中毒の原因菌としては圧倒的にキャン ピロバクター菌とサルモネラ菌が多くみられます。平成10年1月から平成12年12月までの3年 間に当院で腸管より検出された原因菌の件数は286件で、そのうちキャンピロバクターが98件、 サルモネラが66件、その他が122件でした。キャンピロバクターとサルモネラ が圧倒的に多いといえます。当院緒データをみると、季節的には両者とも夏ばかりではなく、冬場も結構みられます。 一般的にはサルモネラが5月から9月の夏に多いのに対し、キャンピロバクターは一年中だらだら 発生するといわれていました。最近は夏風邪のウイルスもけっこう冬場にみられるので、同じような現象なのかもしれません。

 その他としては病原性大腸菌やエルシニアなどがありました。病原性大腸菌の 中で問題のO157の患者さんは4人ありました。全員全身的な合併症はありませんでした。(平成9年には全身的な 合併症を伴ったO157の患者さんがありましたが、豊橋市民病院に入院し、無事に治癒しています) O157にはもちろん充分な注意が必要です。かといって、 キャンピロバクターやサルモネラの食中毒の頻度はO157の何十倍 の頻度と推測さるのでこちらの注意も怠れません。(01/3/6)











下痢のときの食事

【問】冬は下痢が多いので、下痢のときの食事について教えてください。

【答え】下痢のときには、脱水になりやすいので水分の補給と、腸管の機能が低下しているの で、消化吸収されやすい食物の摂取を心がけます。

 実際には水分補給としてお茶、味噌汁、野菜スープ、リンゴジュース、イオン飲料など、食 事としてはおかゆ、うどん、パンなどが良いでしょう。乳児のミルクは3分の2程度の薄めにし たり、乳糖の入っていないミルク(ボンラクト、ノンラクト、ラクトレス)を用います。 母乳は制限する必要はありません。

 避けた方がよいものは冷たい飲物、脂肪の多いもの(揚げ物、牛乳)、線維の多いもの (いも,ごぼう)、砂糖分(ヨーグルト,菓子)、刺激の強いもの(みかん)などです。

 尿量が少なく、皮膚や口が乾燥して元気がないなど脱水が強いときは、点滴をす る必要がありますので、注意しましょう。





食べて良いもの
食べて悪いもの
湯ざまし、野菜ス−プ、りんごジュース
うすい番茶、味噌汁、おかゆ、食パン
ソリタ顆粒(湯ざまし100mlに溶かしたもの)
イオン飲料(アクアライト、ポカリスエットなど)
じゃがいもの裏ごし、よく煮たうどん
乳児には母乳または2/3の濃さにしたボン
ラクト,ノンラクト,ラクトレスなどの乳糖のないミルク
冷たいもの、刺激の強いもの:炭酸飲料
アイスクリーム、コーヒー、牛乳、香辛料、みかん類
脂肪の多いもの:揚げ物、バタ−
牛乳、肉、卵、油の多い菓子
線維の多いもの:いも、ごぼう、わらび
海草、豆類、ぜんまい、菜っぱ
糖分の多いもの:カステラ、ヨーグルト、プリン





周期性嘔吐症(自家中毒)

【問】何度か嘔吐して病院で受診をしたら、自家中毒といわれました。どんな病気ですか。

【答え】昔から自家中毒という言葉がよくいわれていますが、食中毒のような中毒ではあ りません。嘔吐を繰り返すので周期性嘔吐症といったり、尿中や血中にアセトンをはじめとするケト ン体が増えるのでアセトン血性嘔吐症といいます。

   原因は感染などをきっかけとして、糖や脂肪の代謝がアンバランスに なるためといわれています。

 2歳から10歳の子どもに多く、症状は嘔吐発作、腹痛、顔面蒼白、元気がないなどです。

 診断は尿検査と、嘔吐下痢症やケトン性低血糖症などの似た症状の病気を除外して行います。

 治療は安静と、糖や水分の経口と、点滴による補給です。反応のよい児では、点滴中にどんどん元気になって いきます。嘔吐が軽度な時は糖分をしっかり摂らせてください。

 嘔吐発作はおおくは1〜2日でいったん治り ますが、何年間かにわたり繰り返すのが特徴です。しかし、けっして悪性の病気ではなく、 ふつうは10歳ごろまでには自然に治ります。